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感性エンジニアリングから機能エンジニアリングへ。素材の融合で価値創出。

株式会社フジコー
代表取締役社長 森 光弘

更新日:2026年6月10日

香川県出身。大学卒業後、関西の大手塗料メーカーを経て、「より現場に近いモノづくりを追求したい」との情熱を抱いて1998年にUターンし、株式会社フジコーに入社。営業の最前線で独自の「調色技術」を武器に全国ブランドの大手メーカーからの高難度な要望を具現化。2000年代には、包装材の技術を工業用途へ転用する「機能材事業」を立ち上げ、同社を素材融合による価値創造を行うエンジニアリング集団へと進化させた。その後、開発・品質保証・総務の各部長を歴任し、2026年1月、代表取締役社長に就任。現在は大倉工業グループの一員として、新理念「Fan Fit Fun」を掲げ、高い目標に向けた組織改革とさらなるイノベーションを牽引している。

※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

伸び縮みする衛生用品の包装材には調色技術が不可欠。

フジコーは1974年にグラビア印刷会社として創業。その後、パッケージ印刷へフィールドを広げました。包装材は一見同じに見えるかもしれませんが、お客さまの工場のラインに合わせ「もっとコシを強く」「もっと滑るように」など、細かな要望が出てきます。その声を形にしなければならない、100%オーダーメイドの製品なのです。

特に生理用ナプキンやトイレットペーパーといった衛生用品の包装材は、難度が高くなります。通常の印刷は赤・青・黄・黒の4色で色を表現しますが、伸縮しやすく、柔らかい衛生用品のフィルムでは柄ズレが起き、正確な色を再現できません。

これを解決するには、高度なノウハウと経験によってインキを事前に調合し、一色で表現する「特色」が不可欠。フジコーは複雑な色を自在に作り出す調色技術を持つ、国内で希少な存在なのです。

フジコーはかつて自社の事業を説明するのに、「感性エンジニアリング」と称していました。それだけ、調色によって新しい価値を生み出すことに強いこだわりを持っていたのです。

調色によって得られた独自技術は、その対象領域をさらに広げています。生理用ナプキンには粘着面を保護する剥離フィルムが不可欠ですが、当時は適度な剥離機能を持たせたシリコーンをフィルムに均一に「塗る」のは困難だと考えられていました。

そこで私たちは調色によって得られた独自技術を応用することで、ポリエチレンフィルムの表面にシリコーンを塗布した新たな剥離フィルムの開発に成功しました。

機能性フィルムが、自動車・情報機器分野で活躍。

調色で培った「異なる素材を調和させ、新たな価値を創造する」という姿勢が、「機能材」分野を開拓する原動力にもなりました。「機能性フィルム」などの機能材は、スマートフォンやパップ剤(湿布の一種)、自動車部品など幅広い分野で用いられています。

塗料などで色を付ける印刷は、グラビアやパッケージなどに用いられます。一方、機能材分野では、塗料の代わりにシリコーンなど用途に応じた特殊な素材を塗布することで、さまざまな機能を付与しています。色ではなく機能を付ける、いわば「透明な印刷」といえるでしょう。

生まれる製品は異なりますが、包装材と機能材のベースとなる技術は共通していて、その中核となる技術が「プライミング(下塗り)」です。

本来、電磁波吸収層などの抵抗層は、そのまま塗ってもプラスチックフィルムに定着しません。しかしフィルムの上にプライマー(下地処理剤)を下塗りすることで、異なる素材同士を安定的に定着させることができます。

これは、私が新規開拓営業を担当していた頃、開発・製造のメンバーとともにトライ&エラーを繰り返すことで実現した技術です。

機能材という分野を開拓できたことで、フジコーの成長を次の段階へ進めることができました。異なる素材の調和により、「感性エンジニアリング」から「機能エンジニアリング」へ進化したと言ってもいいかもしれません。

さまざまな素材を融合させ、価値を生み出す「料理人」。

包装材と機能材を事業の2本柱として、フジコーの業績は年商100億円を突破するまでに成長しました。当社の特徴を一言で表すと、「料理人」のようなものと考えています。

フジコーの製品には、ポリエチレン、ポリエステルなどのプラスチックフィルムや紙、機能を発揮させるための塗材など、さまざまな素材が必要です。私たちは幅広い素材メーカーとお付き合いしてきたので、どのメーカーのどの素材を用いればお客さまの要望に適した製品になるか、検討して調達できます。

「A社のこの素材とB社のこの素材を調合して剥離材を作ればいい」とか「フィルムはC社を選んだ方がいい」と、的確に判断できるわけです。当社はどの素材メーカーともフラットな立場でお付き合いをしているため、素材をどこからでも調達し、調合・コンバートして、オリジナルの製品に仕上げることができます。

お客さまの声を聞き、無限にある選択肢の中から最適の素材を持ち寄って、要望にあった一品を提供する。人々においしいものを妥協なく提供する「料理人」と、私たちフジコーの立ち位置はよく似ているように感じます。

もちろん、際限なくメニューの数を増やし続ければ効率が低下してくるでしょう。選択と集中を意識しながら、加工して最適の製品に仕上げるコンバーティング技術を最大限に活かしていきたいと考えています。

大倉工業グループの一員となり、シナジーを発揮。

2026年1月、東証プライム上場企業である大倉工業株式会社のグループの一員となりました。この決断の背景にあったのは、全国・海外でブランドを展開する大手顧客に対する供給責任を果たすことで、信頼関係をより強固なものにしたいという想いです。

フジコー単独では困難であったグローバルな供給体制の構築も、大倉工業という強力なバックボーンがあれば可能です。今後は海外展開を含めた顧客の要望に自信を持って応えられるでしょう。

大倉工業にもパッケージや機能性フィルムの材料を供給する部門がありますが、ビジネスの立ち位置には当社と明確な違いがあります。

素材メーカーである大倉工業は、お客さまの製品化が未定の段階という「上流」でビジネスを進めるのに対し、コンバーティングを担う当社は製品リリース目前という「下流」で困難な問題に直面したお客さまから声をかけていただくことが大半です。

市場に極めて近い位置でビジネスを展開しているからこそ、当社には「今、現場で何が求められているか」という生きたニーズが豊富に蓄積されています。

フジコーの持つ情報を大倉工業に共有すれば、「大倉工業の製品・技術開発が効率的に進み、シナジーが生まれるのではないか」とも期待しています。顧客の困りごとを解決してきた当社の知見と大倉工業の素材開発力を融合させ、全体として高付加価値なソリューションを提供していきます。

組織を垂直統合。スピード感を持って事業を推進する。

大倉工業グループに加わり、私たちは素材メーカーと加工メーカーによる垂直統合を加速させています。従来、把握しきれていなかったグループ内の素材技術を再解釈し、新たな市場へつなぐ。そんな動きが活発化しています。

大倉工業の各部門とフジコーが連携した営業提案を行うなど、組織の意欲とスピード感は高まるばかりです。このスピードを最大化するため、組織も再編しました。従来の機能別組織から、包装材、機能材、イノベーションセンター、コーポレートセンターからなる事業部制に移行。

素早く決断・行動しやすい縦割りの組織にし、特に2024年に立ち上げたイノベーションセンターは既存の枠組みに縛られない自由な発想で、新たな技術を発信する場と位置づけています。

機能材については、さらなる発展が見込めます。情報電子、医薬品、半導体、モビリティなど成長性の高い分野で使用されており、世界的な大手メーカーから高い評価を得ているため、事業の牽引役となってくれるでしょう。

一方、包装材分野では、異なる特性のフィルムを貼り合わせる高度なラミネート技術に注力しています。ウェットティッシュのバリア機能などに代表されるこの技術は機能材にも応用可能で、利用価値が高いと思います。

また、持続可能な社会への貢献として、ラミネート構造のモノマテリアル化にも着手。異なる部材を再生可能素材へ転換することで、環境負荷低減にも貢献します。

高い目標を前にして、ワクワクが止まらない。

私はこれまで、営業、開発、品質保証、総務とさまざまな部門を渡り歩いてきました。その中で確信したのは、事業の基盤は品質にあり、品質の向上を支えるためには「人」が重要、ということです。人材の質が上がらなければビジネスの質も高まりません。

組織の再編やイノベーションセンターの設立、そして大倉工業グループへの参画など、環境は整ってきました。これらの環境を使いこなし、新たな付加価値を生み出す人材を仲間に加えなければなりません。

優先度が高いのは理系人材の確保でしょう。大倉工業との連携により、高度な研究・分析設備を共有できるようになったため、人材を拡充できればR&Dはいっそう進化するでしょう。

大倉工業グループの一員としてグループが掲げる売上1200億円という高い目標を達成するため、フジコーもチャレンジを続けなければなりません。私は日ごろから従業員にも「常に高い目標を掲げよう」と説いてきました。

高い目標が人を正しい行動に導くのです。この高い目標達成に向けてフジコーらしく動き回れると思うと、胸が高鳴ります。

まさに当社の新たな経営理念である「Fan Fit Fun~お客さま、協力会社さま、従業員他ステークホルダーに寄り添い、苦しいこともワクワクな楽しみや期待に変えていく」を実感しているところです。あなたも一緒に、ここで仕事を楽しみませんか。

編集後記

コンサルタント
森 友良

今回のインタビューでは、同社が世界的な大手メーカーから信頼を勝ち得てきた軌跡に触れることができました。

その背景には、調色で培った感性を機能へと昇華させる独自の技術と素材を自在に操る料理人のようなコンバーティング技術があります。この両輪の力であらゆる顧客課題を解決できることこそが、同社の強みであると再認識しました。

また、こうした強みを支える根底には挑戦を称える組織文化があり、大倉工業との融合によって、その舞台はさらにグローバルへと広がっています。「香川から世界へ挑戦したい」。そんな想いを持つ方にとって、同社は最高のフィールドといえるでしょう。

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