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商社×技術の融合モデルを武器に、世界に挑む。

大豊産業株式会社
代表取締役社長 乾 和行

更新日:2025年10月01日

1984年、香川県高松市生まれ。2008年に明治大学経営学部を卒業後、丸紅泰国会社に入社し、バンコクで7年間にわたり海外ビジネスの最前線を経験。帰国後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)にて経営戦略、財務、マネジメントなどの理論的枠組みを学び直し、2017年に修了すると同時に大豊産業株式会社に入社。2019年、代表取締役社長に就任。社長就任後は、組織体制や社内風土の改革に取り組むとともに、M&Aによるグループ拡大や最先端技術の導入を積極的に推進。2025年には東京本社を開設し、四国を基盤としながら全国、そして世界を舞台にした事業展開を加速させている。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

社会の進化を支え続けるという使命。

当社は1948年の創業以来、77年以上にわたって四国の発展と共に歩んできた総合技術商社です。

戦後間もない頃、電気機材の卸売業から始まり、時代の変遷やお客さまのニーズに応じて、業態を大きく変化させてきました。現在の私たちの事業領域は大きくわけて三つあります。

一つ目は、「プラント関連事業」です。日本の製造業が抱える人手不足という課題に対し、私たちはファクトリーオートメーション(FA)の推進による省人化だけでなく、AIやIoT技術を駆使し、「ものづくりの現場に革新をもたらし、これからの日本の産業を牽引していく」そんな気概を持って取り組んでいます。

生産ラインの効率化から働く人の負担軽減まで、お客さまの現場に寄り添った最適なソリューションを提案しています。

二つ目は、「インフラ整備関連事業」です。人々が安全で快適な生活を送る上で欠かすことのできない電力や通信といった社会インフラの根幹を支える資材の供給から、設計、施工、そして保守に至るまで、ワンストップでサービスを提供。長年培ってきた経験と信頼を礎に日本の社会基盤を力強く支え続けています。

三つ目は、「スマートエネルギー関連事業」です。脱炭素社会の実現に向け、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しています。

また、LED照明やエネルギーマネジメントシステムの提案を通じて、企業の省エネ・コスト削減にも貢献しています。地球環境との共生を図りながら、持続可能な社会の実現を目指す。これも私たちの重要な責務だと考えています。

これら三つの事業は、それぞれが独立しているようで実は密接に連携し合っています。それぞれの分野で培った知見と技術を融合させることで、他社にはない私たちならではの総合力を発揮できるのです。

例えば、工場の省エネ化にはスマートエネルギーの知見が活かされますし、社会インフラの安定稼働には最先端のIoT監視システムが不可欠です。

インフラ企業から日本を代表するメーカー、そして官公庁に至るまで、多岐にわたるお客さまの事業活動を、この三領域を組み合わせることで文字通り「縁の下」から支えています。

グループ全体の年商が220億円に達し、高い自己資本比率を維持できているのも、こうした盤石な事業基盤と、お客さまとの長年にわたる信頼関係の賜物であると考えています。

私たちはこの安定した経営基盤のもと、これからも社会の変化を先取りし、未来の課題に挑戦し続けます。

四国で育まれた唯一無二の提供価値。

当社の最大の強みは「商社」と「技術力」を高いレベルで融合させている点です。

時にはお客さま自身もまだ気づいていない潜在的なニーズを対話の中から汲み取り、幅広い商品知識と専門的な技術力を掛け合わせ、最適なパッケージサービスとして提供する。これこそが他社には真似のできない私たちのコアコンピタンスです。

多くの場合、販売と技術提供は別々の会社が担っています。しかし、私たちは常に販売と技術がセットで成り立っています。

例えば、工場の生産ラインを自動化したいという要望があれば、世界中のメーカーから最適なロボットやセンサーを選定するだけでなく、国家資格を有する専門技術者がシステムの設計から施工、さらに稼働後の保守・メンテナンスまでを一貫して担当します。

まさに、お客さまの課題解決における「入口から出口まで」、すべてをお任せいただける体制こそが私たちの誇りです。

この独自のビジネスモデルは、四国エリアで事業展開する中で必然的に育まれてきたものです。東京や大阪のような巨大市場とは異なり、四国では顧客数が限られています。

だからこそ、一社一社のお客さまの要望に耳を傾け、より深く、より長くお付き合いをさせていただく必要があります。

技術提供の面でも、四国エリアに技術者が豊富にいる状況とは言えず、顧客への最適なサービス提供を叶えるためには自社で育成していく必要がありました。

創業者である私の祖父は、お客さまの工場を訪れた際に工場の隅々まで目を配り、その工場が本当に必要としているものは何かを必死に考えていたそうです。

これは、お客さまの表面的な要望の奥にある本質的な課題を掴もうとする、私たちのDNAを象徴するエピソードです。

お客さまの事業に深く入り込み、単なる「業者」ではなく、共に未来を考える「パートナー」となる。そのために商社機能と技術者集団としての機能の両方を磨き上げることが不可欠でした。

四国という土地で生き抜き、お客さまからの信頼を勝ち得るために培ってきたこの姿勢こそが、今や全国、そして世界で戦うための最大の武器になっています。

事業の多角化とM&Aで加速する、事業領域の拡大。

社長に就任して以来、私が一貫して推し進めてきたのは事業領域の拡大です。新型コロナウイルス感染症の流行期には、インフラ領域とプラント領域のバランスに変化が見られました。

以前はプラント領域が多かったものの、コロナ禍で公共関係の案件が増加したことでインフラ事業の比重が大きくなっています。

会社全体の売上高は大きく変わらなかったものの、その中身は大きく変化しました。異なる事業領域を持つことが盤石な経営基盤の形成に繋がるので、今後も領域の拡大に注力していきたいと考えています。

例えば、防衛分野、BCP(事業継続計画)関連、空飛ぶクルマなどのモビリティ事業、電気関連技術を活用した新規事業(漏電チェック、火災予防など)など、既に着手しているものを含め、あらゆる展開を進めています。

そこにも絡むアプローチが、積極的なM&Aです。ただし、私たちが目指すのは、やみくもな規模の拡大ではありません。あくまでも、当社のコアコンピタンスである「商社×技術者集団」というモデルを強化するための、戦略的なM&Aです。

例えば、地中送電線や架空送電線の材料メーカーをグループに迎え入れたのは、当社のインフラ整備事業において、製品開発から販売、施工までを一気通貫で提供できる体制を構築するためでした。

これは単なる足し算ではなく、掛け算によるシナジーを狙ったものです。当社が持つ広範な顧客ネットワークという「販売力」と、材料メーカーが持つ「製造・開発力」を組み合わせることで、これまで以上に付加価値の高いソリューションを提供できるようになります。

東京と四国の両輪で駆動する、グローバルと西日本の開拓戦略。

2025年1月に開設した東京本社は東日本を管轄するだけではなく、グローバル戦略の最前線基地としても機能させていきます。

私自身、大学卒業後に丸紅のタイ法人で7年間勤務し、海外ビジネスのダイナミズムとものづくり現場の厳しさを肌で感じてきました。

何万点にもおよぶ製品を生産しても、そのうち半数が不良品となってしまう環境の中で必死に課題解決に取り組んだ経験は、製造業を理解する上での原点となっています。

この経験から、私は海外にはまだまだ大きなビジネスチャンスが眠っていると確信しています。

例えば、タイでは水害被害での死亡者の多くが水害そのものではなく感電死であり、また多くの火災が漏電によるものです。

インフラを整えることで救える命があり、電気技術を基軸とした漏電チェックや火災予防に貢献していきたいと考えています。

一方で、高松にある西日本本社は四国のお客さまとの関係をより一層深化させるとともに、中国地方や九州といった西日本エリア全域へ私たちのサービスを広げていくための拠点として機能しています。

私が社長に就任してからの数年間で、今治市や宇多津町に新たな営業所を開設し、社員も60名ほど増えました。これは私たちが四国に根を張り、この地で成長し続けるという決意の表れです。

東京で得た最先端の情報や技術、海外で得た新たなビジネスモデルを、いち早く四国に持ち帰って地域のお客さまの課題解決に役立てる。そして、四国で培ったお客さまと深く向き合う姿勢を、西日本、さらには世界へと展開していく。

東京と四国、この二つの本社は互いに情報をフィードバックし合いながら成長を加速させる、いわば「両輪」なのです。この両輪を力強く回していくことこそが、私たちの成長戦略の核心です。

事業を通じて社会課題を解決し、次世代の土壌を育む。

私たちの考える社会貢献とは、事業活動とは別に行う特別な活動ではありません。事業そのものを通じて、社会が抱える課題を解決していくことこそが、最大の社会貢献であると信じています。

例えば、当社が提供する漏電火災を防ぐためのシステムや、災害時にも事業を継続させるためのBCPソリューション、地震計の導入などは人々の安全・安心な暮らしに直結するものです。

電力、通信、交通といったインフラを支えるという私たちの日常業務そのものが、社会の安定に貢献している自負があります。

それに加え、私たちが特に力を入れているのが、次世代を担う人材の育成です。その象徴的な取り組みが、四国の高校生を対象とした「ロボットアイデア甲子園」の開催です。

このイベントでは、生徒たちに工場で実際に稼働している最先端の産業用ロボットに触れてもらい、技術者がその仕組みを分かりやすく解説します。そして、「ロボットで私たちの生活をどう豊かにできるか」というテーマでアイデアを競い合ってもらうのです。

この活動に情熱を注ぐ背景には、地方が抱える「教育格差」への強い危機感があります。都市部に比べて、地方の子どもたちが最先端の技術に触れる機会は残念ながら限られています。その結果、将来の選択肢が狭まってしまうのではないか。

このコンテストを通じて、四国の若者たちに「こんなに面白い世界があるんだ」「自分たちの地元にも、世界レベルの技術を持つ企業があるんだ」ということを知ってもらいたいと考えています。

そして、彼らの中から日本の産業を担う技術者が一人でも多く生まれてほしい。それは、単なる社会貢献活動というよりも、地域の未来を発展させていくための長期的な「土壌づくり」だと考えています。

未開拓の地・四国で描く、新たな未来。

今、第三の創業期とも言える、大きな変革の時代を迎えています。

だからこそ、私が共に働きたいと願うのは、「現状維持」を良しとせず、常に「もっと良くするにはどうすればよいか」という課題意識を持ち、変化を恐れずに新たな挑戦を楽しめる方です。

「人口減少が進む四国に、未来はあるのか」と思う方もいるかもしれません。しかし、私は全く逆の見方をしています。

見方を変えれば、四国はまだまだ手つかずの課題や未開拓の市場に満ち溢れた「フロンティア」なのです。

解決すべき課題があるということは、そこにビジネスチャンスがあるということ。そして、その課題を解決した先には地域が元気になる未来が待っているはずです。

何もない場所に新たな価値を創造し、自らの手で未来を切り拓いていく。そんなダイナミックな挑戦ができる場所が、ここ四国にはあります。

現状に満足せず、自らの力で変革を起こしたいと願う、熱意あるあなたと共に働ける日を、心から楽しみにしています。

編集後記

チーフコンサルタント
佐々木 一弥

「これまで」と「これから」を活き活きと語る乾社長のパワーに圧倒されるインタビューでした。「商社×技術」という独自の強みは、顧客一人ひとりと深く向き合う必要性のある四国だからこそ生まれたものであるというお話から、同社が培ってきた基盤の強さを感じます。

このような事業姿勢をベースに、課題先進エリアでもある四国を「フロンティア」と捉え、「日常業務そのものが社会課題の解決に直結する」という視点で事業に取り組まれていることに感銘を受けました。

四国に深く根を張りながら、東京本社を基点に世界へ挑む。その盤石な両輪経営で、大豊産業社がこれからどのような未来を描いていくのか、その歩みから目が離せません。

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